
(前回からの続き)
では、企業の動向をみてみましょう。ブランドとしては、ナショナルブランドはあるのでしょうか。実際の詳細なデータがありませんので、消費者視点のみでの観察としてみてみましょう。まず、北京地区では味多美(ウェイドーメイ:非上場:http://www.wdmcake.cn/)が競争優位のブランドのひとつとして確立をしています。これは、明らかで、街中の小規模個人商店でも、取り扱われていますし、さらに公共バス側面広告でも、圧倒的に見るケースが多いです。そのほか古参のブランドも多く、粽(ちまき)で有名な稲香村(http://www.daoxiangcun.org/)などもよく見かけます。カルフール等のスーパーマーケットにいきますと、月餅がブランドごとに陳列されています。
中国では、これだけ大きな商業イベントであるにもかかわらず、地区ごとに別のブランドがそれぞれ確立しているというのは面白い現象といえるでしょう(もちろんさらに都市化されていない地域にいけば、ブランドすらない可能性が高いです)。これは、実際に国際ビジネス(International Business)の議論でもありますが、省間流通障壁(国内地域障壁)のほうが、自由化の進む海外貿易障壁よりも高いために、国内他地域販売よりも、海外輸出販売のほうが税率の関係で、価格競争力をもつことがあるようです(世界でも唯一ともいえるでしょう)。もちろん、ここには、より高度な議論(複雑な要素)が入りますので、ここでの議論は割愛しますが、こうした得意な構造からナショナルブランドが育たない原因にもなっているといえるのではないでしょうか。地域で発展したブランドは、国内の他地域に展開するのが当然の流れとしてみられていた経営学において、これが、地域ブランドがナショナルブランドという成長の過程をとびこえて、海外でブランド力を増すという現象は非常に興味深いですね。
また、これらの地域ブランド月餅についての、品質上(味)の差異を中国の友人たちにきいてみましたが、「とくにない」という回答がほとんどでした。つまり、おいしさのような機能で選択されているのではなく、完全に「ブランド力」という商業手法によって付加価値が増しているだけの財であるといえるかもしれません。
もはや、月餅という伝統的行事だけがのこり、そこに、ブランド力だけの差異(形骸と化した「味の差異」)が発生し、さらにそのブランド力もナショナルブランドが登場せず地域ブランドだけであるという状況の中、「品質の差別化」ならびに「グローバルブランド」という2つのポジショニング戦略をもってあらわれたのが、Daily Queen、ハーゲンダッツのアイスクリーム月餅、ならびにStarbucks、高級ホテルの高級インポートスウィーツ的月餅です。これらは、まったくもって伝統的な月餅のスタイルを踏襲した製造ではありませんが、はっきりいって僕の個人的感覚としては、相当においしいです(そもそも、アイスクリームが月餅というのは、便乗そして伝統の形骸化甚だしい限りですが。値段は伝統的月餅の5倍前後します)。
地域ローカルブランドVS.グローバルブランドという、他国ではありえない面白い期間限定の戦いがみられる中国の中秋節、そこには、あいまいなナショナルブランドの戦略を挟まない徹底した、低価格か高付加価値という二極構造がみられます。それは、まさに、前近代的な舶来品か国内品かという構造に、最新の現代マーケティング科学をかぶせた火花といえるのではないでしょうか。
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