ホップ、トリップ、ナスダック!
2009-06-02 00:44:03 (14 years ago)
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- 中国内での企業観察
世界的なネット系ベンチャーブームもとうの昔に過ぎ去り、群雄割拠の時代から多くの企業が市場から撤退し、優秀な企業が残るようになって来ましたね。そうした企業がイノベーションを失わずにどこまで魅力的であり続けるかというのがキーであることは、みなさんもご承知の通りです。
さて、中国のネット企業も多くあり、中には上場(IPO)を果たしてきた企業も少なくありません、しかしまもなく稼動する深セン市場でのベンチャーボードがまだなかったこれまでにおいては、海外での上場を果たすことが中国企業にとってのある意味第一段階の目標だったわけですね。
海外上場は、海外市場(サービスの提供先という意味の市場)を事業展開として目指したという理由も多少はあるでしょうが、もっとも大きな理由は、中国にベンチャー市場(株式取引所という意味の市場)がなかったからというファイナンスとしての方法というのが主要な理由でしょう。
ということは、観察対象として伸びている中国オリジナル企業のネットベンチャーを分析する場合、中国市場よりも海外市場での上場とそれからの行方をチェックする必要があります。今回そうした観点から、また消費者としても非常に便利に利用しているサービスを提供している企業を紹介します。2003年末米国ナスダック市場に上場を果たした携程旅行網(Ctrip:証券コードNASDAQ:CTRP:http:// www.ctrip.com/)です。
ホームページによりますと、1999に中国上海で創業し、現在は、北京、広州、深セン等11都市に支店を設立し、現在は9000人の従業員を抱えています(給与形態・雇用形態が異なりますから、単純に従業員数だけでは、日本企業の従業員数と規模の比較をできません。)。主要事業は、中国市場をメインにした国内・国際航空チケット手配(利益貢献割合40%程度:年々相対的に増加傾向)、ホテル手配(利益貢献割合50%程度:年々相対的に減少傾向)、ツアー手配等のいわば、ネット専門旅行代理店です。中国内でのシェアは50%を超え、業界内ナンバー1だそうです。米国での事業展開はしていません。
経営陣はアメリカ、スイス、香港、中国の出身で、IT技術者、旅行管理者、ファイナンス専門職などのバックグラウンドをもっているとのことですね。2008年の粗利潤は15億元弱、純利潤で4億4400万元です。
まさに中国ITベンチャーの雄、典型例といったところで、経営陣のMBAの取得割合や、その発展速度、そして米国NASDAQ市場への上場成功などなど、絵に描いたような軌跡をたどっています。CEOの沈南☆(☆は朋に鳥)もMBAホルダー、上海出身42歳という分かりやすいベンチャー社長ですね。
我々日本人にとってなじみの深いところでは、楽天(Rakuten:証券コードJQ4755:http:// www.rakuten.com/)が2004年にCtripの株式を取得し、筆頭株主になったことでしょう(そして、楽天は経営陣内に日本人を派遣しました。)。その時点での株主構成は、ベンチャーキャピタル30.7%、楽天20.4%、経営陣18.2%、市場流通株式26.1%でした。なにしろ、興味深いのが、その頃の中国内ブログの記事をみると「なんと!!日本が買収か!もーぜったいCtripで買わない!」「中国は日本に占領されました。ご臨終」「楽天は中国人を拒絶する会社だ!中国人が楽天に登録するとすぐにそれを抹消する。きみたちに少しでも中国人の血が流れているのなら、そんな企業(楽天)に買収されたCtripをまだ利用することはどうなのか?」などという批判的な内容がじゃんじゃかでていました。その中で奇妙に、皮肉的に肯定的なものもありまして「日本(企業)に買収されたから、制服姿のメイド(中国の当て字)さんがサービスしてくれるようになりますね。」というものでした。なんとも、中国のネット文化構成層の日本に対するイメージがつかめる反応ですよね。
そして、楽天は、2004年6月に120億円で取得し、2007年8月に680億円で取得した全株式を売却しています。理由は「売却資金は運転資本や借入金の返済、子会社への投融資などに充当する予定。」とのこと。
現在の株主構成は、下記の通りですが、特に目立った偏りはありません。というか現経営陣もそれほど、株式を保有していないので、オーナーシップは完全にIPO後の「モヌケノカラ」で、ベンチャーキャピタルや創業者グループが売り抜けた後の姿という感じです。
さらに、Ctripの快進撃はとまりません、つい先日今年2009年5月になって如家(HMIN:証券コードNASDAQ:HMIN:http:// www.homeinns.com/)の株を引き受け18.25%の筆頭株主になりました。如家というホテルグループも中国市場で成功しており、さらにNASDAQに上場するという成功パターンを描いていますし、これを、Ctripが買収し筆頭株主になりました。IPOの次はM&Aをガシガシつきすすめるという方法ですよね。笑っちゃうくらいアメリカの典型的なベンチャーの手法ですが、どうも、こうした成功をみていると、日本にそのまま当てはめるにはいろいろと問題がでてきそうな急展開ですが、これまでのところでは、中国にはアメリカ的なビジネス手法がそのまま通じるということなんでしょうかね。
続いて、このCtripに対しての消費者的視点ですが、ホームページ上での買いやすさはともかく、なにしろ顧客への対応がいいです。中国のそれまでのネット販売(実店舗相対取引ですら)のやり方とはまったく違うというのが明らかにわかります。予約をすれば、メール、携帯メールでの確認はすぐにきますし、手配中、手配完了などのステータスもしっかりと届きます。そして、チケット配送は、前回のブログでも書きましたように、家までチケットを運びそこで現金手渡し、クレジットカード決済(Ctripのカード決済はセキュリティーがかなり硬いので安心できます)、銀行振り込み等も選択することができますし、何かしら問題がおこれば、しっかりと電話で連絡がきます。外国人ということがわかると、英語でも対応してくれます(さすがに日本語サービスはありませんが。)。その電話の対応がこれまで聴いたことないようなマニュアル的エレガントな対応です。日本では普通ですが、そうしたマニュアル的エレガントは、対応されていて気持ちがいいものです。
もちろん、適当なマニュアルだけでは、顧客として満足でありませんが、「そんな稀な質問に対する回答すらマニュアル化されているのか」と質問した顧客に思わせるような精密なマニュアル対応ということですね。分かりやすいところで言えば、日本のクレジットカード会社の電話対応や、銀行の中央コールセンター電話対応のそれです。どれだけ、質問項目と回答がデータベース化されているのかと驚いてしまうほどのやつです。
中国のサービス業の他の企業が、相当にレベルの低いことで闘っている中、このパーフェクトなサービスは、当然に競争力をもつだろうというのは、びしびしと感じます。
んー、やりおりますね。
日本の他のネットサービスを展開すれば、中国市場はまだまだビジネス展開の余地があるような気もしますね。僕のMBA時代の中国人の友人もつい先日SNSと口コミサイトを合わせたようなショッピングモールを作るといってベンチャーを立ち上げましたが、こんな感じでのびちゃったりするのでしょうか。ね。ふふ。
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Question:キリンビールから完全ノンアルコールビールが発売され、車を運転される方も、アルコールが苦手だった方も、カロリーを気にしていた方も、ビールをヘルシーにいつでも楽しめるようになりました。そんなキンキンッに冷えたビールといっしょに、焼き鳥食べたくなりませんか?軟骨入りつくね、モモ肉、ネギ間おいしいですね~、さて、まずは一串目、あなたならどっちの味の串を注文する?
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